高齢者虐待防止法11年目を迎えて思うこと

分類  :巻頭言
題名  :高齢者虐待防止法11年目を迎えて思うこと
著者  :松下 年子
所属  :日本高齢者虐待防止学会 副理事長、横浜市立大学大学院医学研究科看護学専攻
収録  :高齢者虐待防止研究 2016[vol.12/No.1] 
頁   :6-8

 平成 27 年,K 市で起きた老人ホーム入所者の連続転落死をきっかけに発覚した高齢者に対する数々の暴行,虐待,窃盗,また K 市に限らず同事業者の他施設における虐待の実態も報じられて,世論の動揺は甚大であった.施設で何が起こっていたのか,なぜ暴行を防ぐことができなかったのかという疑問とともに,養介護施設従事者等による高齢者虐待を予防・予知・防止する重要性と困難性が,身に染みて反芻された.平成 18 年に「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(以下,高齢者虐待防止法とする)」が施行されて以降,養介護施設従事者等による高齢者虐待(以下,施設内虐待とする)の相談・通報件数と虐待判断事例数は増加し続けてきた.平成 18 年では相談・通報件数と虐待判断事例数が 273 件と 54 件であったのが,平成 26 年には 1,120 件と 300 件に,相談・通報件数は 4.1 倍,虐待判断事例数は 5.6 倍に膨らんでいる(厚生労働省,2016).法律の施行により虐待周知は間違いなく広まったはずであり,施設従事者等への虐待防止に向けた研修体制等も整備されたはずである.にもかかわらず,まるでそれらの成果はいかばかりかと問うかのように,件数そのものは増大してきた.もちろん,周知が広まった分,これまで欠如していたアンテナが複数立ち,潜在化していた事例が発見されやすくなったという見方もできなくない.つまり,施設内虐待が現実に急増している可能性と,見つけやすくなった可能性の両者が想定される.しかし私は,前者の虐待そのものの増多が後者を凌駕しているのではないかと危惧する.(本文の一部)

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高齢者虐待防止研究vol.12 6

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