本大会は高齢者虐待防止法成立(2005年11月)から20年を迎える大会となります。法成立後から、法に基づく対応状況等に関する調査結果が公表されていますが、養護者、養介護施設従事者の虐待の相談・通報件数および判断件数は、高水準で推移しています。こうした現状から、今大会においては対応方法や法整備に加えて、いま現場で求められている問題提起やあるべき論だけではない、真の未然防止に資する取り組みの在り方を考えていきたいと思います。
また、この20年間で私たちの地域や社会のありようは大きく変わりました。20年前と比較すると、世帯構成や介護者の属性も大きく変わり、さらに少子高齢化による人口減少、労働力人口減少による社会保障費確保、そして介護人材不足の深刻化など。このような大きな社会変容をふまえ、高齢者虐待が増加することを未然に防止するための具体策を検討提案してゆくことが求められています。本大会において、いまの家族形態、職場環境、地域社会の在り方に適応した対策を改めて見つめ直し、これからの高齢者虐待の未然防止について議論を深めていきたいと思います。

第21回日本高齢者虐待防止学会 高知大会 大会長
高知県立大学社会福祉学部 教授
矢吹 知之