大会長挨拶

 2020(令和2)年度延期となっております表記大会ですが、2021(令和3)年9月26日(日)にオンライン形式で開催することになりました。新型コロナウイルス感染の状況も見据えて確実に開催できる方法を優先すべく、オンライン(ZOOM)を活用して参加いただく形式となります。なお、大会のテーマは「高齢者虐待の防止と尊厳を支えるケアサービス~ケアの本質を探る~」となります。

 2000(平成12)年の介護保険制度がスタートしてから20年が経過しました。高齢者介護に関するサービスは大幅に拡大し「多様な主体の参入」も図られ、利用形態に応じて様々な場所で各種の介護サービスが受けられるようになりました。その一方で毎年公表される高齢者虐待に関する報告例は増加を続けています。各ケアサービス事業者、施設、自治体等では関係者へ向けた様々な研修や教材の開発、また、外部からの来訪者を増やすなど、いわゆる「風通しのよい」現場づくりも行われておりますが、まさに増加と減少のせめぎあいを続けているような状況です。

 しかしながらここへきて、様々なケアサービスに関係する要因の変化がみられています。たとえば介護人材等の不足です。ご承知の通り日本は少子高齢化が急速に進んできており、(コロナウイルス感染拡大直前までは)分野を問わず就労人材不足が顕著になっていました。少子化により各学校や養成機関では入学者が減少し、特に福祉・介護関係の養成施設・学校では減少が顕著で学科や学部の縮小や閉鎖が散見されています。また、直接サービスを提供するケア関係職員に限らず、間接的に各種の相談援助を行う職種においても不足傾向が顕著になってきているところです。また、高齢者の就業人口増加等の影響もあり、民生児童委員や介護相談員、オンブズマン、自治会役員やボランティアなど各種の地域の見守りを担う人材も不足傾向にあると聞きます。高齢者虐待を防ぐための職員の育成や、外部からの目による「風通しのよい」現場づくりを進めるには、いささか逆風も吹いていると言わざるを得ないと考えています。そこへ今般の新型コロナウイルス感染拡大の影響による、対人対面関係の遮断縮小です。また、地域における介護殺人に関する報道も散見される中、これだけ相談支援を行う機関が増えているにも関わらず、救えない現実が私たちの前に立ちはだかっています。それぞれの事例では様々な原因がありひとくくりに語れないところではありますが、何とかできなかったものか。そう思わずにはいられない今日この頃であります。

 そうした中で今般、介護保険制度の改正により、介護サービスや施設において高齢者虐待防止の義務化が図られることになりました。高齢者虐待防止へ向けどのような実践が、研究が行われてきるのか。過去を振り返り未来を見据え、ぜひ多くの方のご参加と学会への入会をお待ちいたしております。

第17回日本高齢者虐待防止学会 WEB大会(大阪実行委員会)

大会長 濵田 和則(社会福祉法人晋栄福祉会)