大会長講演

『高齢者福祉施設における虐待予防に向けた取り組みの変遷と今後の論点
 ~昭和・平成・令和』

濵田 和則 はまだ かずのり

社会福祉法人晋栄福祉会 理事長

1986(昭和61)年 明治学院大学 社会学部社会福祉学科卒業

2015(平成27)年 大阪市立大学大学院経営学研究科修了 グローバルビジネス
        医療・福祉イノベーションマネジメント専攻 経営学修士(MBA)

 1986(昭和61)年介護職員がまだ寮母と呼ばれていた時代、特別養護老人ホームに就職した時期は高齢化率7%を超える時期であったが、まだ、脳血管疾患が脳軟化症と呼称されていた時代であった。在宅介護サービスは皆無と言え、普通の住宅でも地域によってはまだまれにいわゆる座敷牢が現存した時期で、家族に認知症者がいることは一般に秘匿されていた。かろうじてあった支援が、旧老人保健法による保健婦(現保健師)による献身的な訪問指導であった。果敢に簡易浴槽片手に訪問するも介護機器が何もない中では限界があり、連携の中で手伝いを依頼され社会資源となって最大限活用される中で、今の医療介護連携や多職種連携による支援に発展していく時期であった。その後連携もあり、多くの特定疾患による要援護者へゴールドプランを背景に、自ら施設長となり在宅サービス供給ステーションにより施設整備やサービス拡大に取り組んでいたが、介護サービス普及により徐々に顕在化してきたのは、いわゆる困難事例と言われた中の一つである高齢者虐待であった。高齢者虐待防止研究会や成年後見支援センター(現 大阪府社会福祉協議会 権利擁護室)による専門相談への参加、2001(平成13)年に朝日新聞厚生文化事業団助成による「高齢者虐待110播」へ参画などを経て、各種職能団体、関係団体とも関わりながら、法人施設、事業の介護支援に取り組む。

講演内容

著者は1985(昭和60)年頃より特別養護老人ホーム(以下「特養ホームと略す」)及び関連する在宅サービス事業の従事者から管理者として関わる経過を辿り、この間、福祉・介護関係の職能団体や施設団体等にも関わってきている。この間は高齢者人口および高齢者ケアが量・質とも飛躍的に拡大を遂げた時期であり、一方で多くの解決困難な課題も顕在化してきた。その一つが高齢者虐待であり防止へ向けた取り組みは試行錯誤が行われてきた。徐々に研修含め各種の防止方法を発見しつつあったが、数年前から続く慢性的な介護人材不足や新型コロナウイルス感染拡大防止対策も予想外に長期化し、新たな課題にも直面している。  この機会にこれまでの取組に関する試行錯誤について検証を行うとともに、コロナウイルス感染拡大下という環境変化を迎えた施設サービスにおいて、高齢者虐待防止へ向けた方法について今後の展望を述べる。


座長

臼井 キミカ うすい きみか

一般社団法人日本高齢者虐待防止学会 理事
岐阜保健大学 看護学部 学部長、教授