基調講演 「新潟県の高齢者の現状と課題」

演者
田村 まみ  たむら まみ

新潟県福祉保健部高齢福祉保健課 在宅福祉班

平成24年4月 新潟県警察採用
令和5年4月 新潟県庁福祉保健部高齢福祉保健課へ出向

講演内容

新潟県内の高齢者虐待の状況について、厚生労働省が毎年実施している「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」に基づき、直近の公表結果である令和3年度の概要について報告する。

【養介護施設等における虐待】
まず、県内の養介護施設等における虐待状況については、相談・通報件数は平成24年度から平成27年度まで増加傾向を示したが、平成28年度以降は毎年度20件台の横ばいで推移している。うち、虐待判断件数は、平成26年度(11件)まで増加傾向を見せ、以降若干減少する年度はありつつも、令和3年度(9件)まで横ばいである。なお被虐待者数について、虐待判断件数に比して特に数の多い平成28年度(107名)や令和2年度(88名)、令和3年度(88名)は、施設職員による複数の利用者への介護等放棄ケースの発生によるものである。

虐待の種別については、傾向は年度によって異なる。令和3年度は、介護等放棄の割合が7割を超えて一番多いが、令和2年度との比較では、心理的虐待の割合が大幅に増加している。

また、虐待を受けた高齢者の9割以上が認知症日常生活自立度Ⅱ以上であった。

施設職員においては、認知症の利用者に対する適切なケアや虐待防止に関する正しい知識と理解を持ち、自身の行動を常に振り返りながら日々の業務に臨むことが大切である

【養護者による虐待】
続いて、養護者による虐待状況については、相談・通報件数は増加傾向にあり、平成30年度には1,000件を超え、令和3年度は1.200件に上った。一方で、虐待判断件数は減少傾向にあり、平成30年度は505件、令和3年度は396件である。

各市町村において広報啓発や擁護者の支援及び警察等関係機関との連携協力体制整備の取組が進められていることで、県民の高齢者虐待防止についての意識が高まり、相談・通報件数が増加し、それによりケースの早期発見・早期対応が可能となって虐待の未然防止に繋がっているとも考えられる。

【県における取組】
県においては、高齢者虐待防止に係る要介護施設従事者向け研修の通年実施のほか、高齢者や高齢者御家族の悩みに気づき、適切な支援に繋げることができるよう、引き続き地域での見守り体制を整備し、市町村や地域包括支援センターの相談機能の強化を支援していく。


座長

小長谷 百絵 こながや ももえ

新潟県立看護大学老年看護学 教授

学歴
千葉大学看護学部卒業、東京医科歯科大学保健衛生学研究科博士前後期課程修了

職業歴
静岡県立子ども病院看護師、自治医科大学病院看護師、昭和大学保健医療学部、上智大学総合人間科学部教授など

社会的活動
日本高齢者虐待防止学会理事、NPO法人ALS/MNDサポートセンター理事など

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