平成18年に高齢者虐待防止法が施行されて11年目を迎えました。施行時には3年後に改正が検討されるはずでしたが、1回も改正されることなく今に至っています。改正されていない理由として1つは、高齢者虐待に関しては、介護保険法などの他の法律を援用することで、ある程度対処可能という考え方があるのかもしれません。
2つ目に、被虐待高齢者に対しては、まっさらな被虐待児とは異なるイメージを重ねやすいという可能性もありそうです。特に養護者による高齢者虐待の場合、それまでの家族関係の歴史があっての結果、という見方がされやすいのかもしれません。結果、子どもの虐待のように「正義のために1枚岩になって動く」という姿勢になりづらいということでしょうか。
最後に、高齢社会の到来によりもっともっと高齢者のことを知らなければならないのですが、それが追いつかないこともあるかもしれません。加齢を経て人は、人や事象の世界を拡大・増大するよりむしろ自分の世界を以前よりも縮小していきます。つまり社会参加の程度を減らすことになります(環境からの離脱)。
それは自然な現象でもありますが、一方で、高齢者が確実に脆弱性を持ち合わせていくことを示唆しています。孤立化した高齢者、自ら助けを出せない高齢者が少なからずいるわけです。そのような状況にある高齢者へのネグレクトや経済的虐待は、見逃されやすい、埋もれやすい虐待といえるでしょう。
また高齢者の居住施設の多様化が、高齢者の生活や高齢者虐待に甚大な影響を及ぼしています。10年前に新調した着衣(法律)が、今の体型ではあまりにもきつ過ぎます。脂肪ばかりか内臓までをも圧迫して苦しめています。
確実に改正されている児童虐待防止やDV法も、高齢者虐待防止法と同様に議員立法ですから、内閣立法でないことだけでは改正されない説明がつきません。大切なのは、法改正しないことの弊害、それについて誰が責任をとるのかということではないでしょうか。このことを本大会で、皆様と再考したいと思います。ぜひご参加ください!
第13回横浜大会
大会長 松下 年子
横浜市立大学大学院医学研究科看護学専攻