西川浩之氏の「法人化への期待」を読んで

 塚田典子 日本大学商学部教授
研究活動・国際活動推進委員会委員長

 私の前にエッセイを執筆された、西川司法書士事務所の西川浩之氏の「法人化への期待」を読み、改めて感じたことをまとめてみたい。

 日本高齢者虐待防止学会は、平成15(2003)年8月9日に創立記念講演・国際シンポジウムを開催し、学会が創設されたことを内外に知らしめた。爾来本学会は、法人格こそもっていなかったものの、西川氏の書かれたように、実質的には「会員個々人とは別の『構成員』と『財源』を有」し、一定の目的のために会員が集まって活動する「団体(社団)」として、「会員個々人とは別の『組織体』として活動して」きた「権利能力(法人格)なき社団」であったという事が理解できた。

 つまり、現在進められている本学会の「一般社団法人化」は、これまで約18年間行ってきた本学会の活動の実態に合わせ、学会の権利義務関係をより明確にして、学会が契約等の当事者となって権利や義務の主体となる事を対外的に明確に知らしめることが目的である。

 西川氏によれば、法人化のメリットは、形式的には、社会における本学会の存在を明らかにすること、そして、実質的には、「権利能力(法人格)」を持つことで、厚生労働省やその他の公的な団体から調査研究事業を委託あるいは補助されること等が可能となることを意味している。

 第6回リレーエッセイ執筆者の梅田大会大会長の濱田和則氏が、「このコロナ禍で在宅の介護殺人が増加しているのでは」との報告をされていたが、実は理事会の中では早くから、このコロナ禍という有事であるからこそ、迅速かつ科学的に、全国の高齢者虐待の実態を把握できないか、と議論・模索していた。しかし、財源はどうするのか、等の壁にぶち当たってとん挫していた。その意味からも、この度の本学会の法人化は「期待の星」であり、法人化後の研究活動・国際活動推進委員会に期待が集まるところである。

 さて、別件で恐縮であるが、本研究活動・国際活動推進委員会では、主に本委員会と学会メンバーを中心に、隔年で、米国老年学会(GSA)(世界で最も大きい老年学に関する学会)で、日本の高齢者虐待防止活動に関する実態をシンポジウムで発信することを目標としてきた。今年は、本来は東海岸にあるフィラデルフィアで開催される予定であったが、コロナ禍の為オンラインで開催された。その為、シンポジウムの発表は過去3回の口頭での発表とは全く違うオンライン形式――発表資料はオンディマンド配信+ライブによる討論―での参加となり、それぞれのステージでハードルもあったが、11月5日に無事発表を終えた。その発表の様子は、来年3月に発刊予定の、第17巻第1号「高齢者虐待防止研究」の学会ニュースでご報告するので、楽しみにしていただきたい。